《停念堂閑記》7

「停念堂寄席」7

 

 《お笑い日本昔話》5 (2013-01-07)

 回数を重ねるにしたがい、次第に苦しくなり、オチも荒んでまいります。しかし、ここで退散するのもシャクですので、もう一つ参ります。いちおう「かぐや姫」をネタにしたものです。

 今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて、竹を取りつゝ、萬づの事に使ひけり。名をば讃岐造 麿となむいひける。その竹の中に、本光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いと美しうて 居たり。翁言ふやう、「われ朝夕毎に見る竹の中に、おはするにて知りぬ。子になり給ふべき人なめり」とて、手に打入れて家に持ちて來ぬ。妻の嫗に預けて養 はす。美しきこと限りなし。いと幼ければ籠に入れて養ふ。

 このようにして、育ったのが“かぐや姫” であります。性格はともかく、美貌は他に比べるものはありません。したがって、世の男どもがほおっておくわけがありません。連日、開店前からの大行列であ ります。この厳しい争奪戦で、限定5人までという決勝戦までたどり着いたのが、いずれもイケメン・大金持ちの石作皇子、車持皇子、右大臣阿倍御主人大納言大伴御行中納言石上麻呂の5人であったということです。

 美貌は比類なき“かぐや姫”でありましたが、その性格はというと、どうでありましたのでしょうか。私のお嫁さんになって欲しいと懇願する5人に、それはそれは無理難題を持ちかけるのであります。

 石作皇子には、「天竺に佛の御石の鉢といふ物あり、それをとりて賜へ」といふ。

 車持皇子には、「東の海に蓬莱といふ山あなり。それに白銀を根とし、黄金を莖とし、白玉を實として立てる木あり。それ一枝折りて賜はらむ」といふ。

 今一人には(可哀想に、右大臣阿倍御主人は「今一人」にされてしまっているのです)、「唐土にある火鼠の裘を賜へ。」

 大伴大納言には、「龍の首に五色に光る玉あり(何と、この玉がかの有名なドラゴンボール   だったのであります。知ってたー。これを知る人は真に少ない現状であります。)。それを取りて賜へ。」

 石上中納言には、「燕の持たる子安貝一つ取りて賜へ」といふ。

 この難題に、なさけなくも、意気地無くも、5人のつわ者はしょんぼりと退散を余儀なくされたのであります。

 ところがです。ここに敗者復活戦を勝ち上がって来たもう一人の若者がいたのです。そうです。今や成金皇子の名を欲しいままにしていた、右大臣須加腹未知残念であります。

 ところが、この時、はじめの5人に図らずも退散されてしまった“かぐや姫”は、当てが外れて、実はすっかり落ち込んでいたのであります。そこで、“かぐや姫”は新たなチャンスを逃すまじと、要求をぐっと和らげ、現実的に必要となる品に切り替えたのであります。

 右大臣須加腹未知残念には,「光りかがやく家具一式を取り賜へ」といふ。

 しめたと思った成金皇子須加腹未知残念は、全国展開をはかっていた家具のセカイイチに駆け込むや、金にいとめはつけぬと、ありったけの金を前払いして、「光りかがやく家具一式」を特注したのであります。

 受取り約束日が来て、意気揚々と須加腹未知残念は、家具のセカイイチへ一直線。

 ところがです。なんと、なんと、家具のセカイイチは跡形もありません。そうです。とんずらしていたのです。

 頭にきた須加腹未知残念は、たまらず怒鳴った。そうです。予想どおりの結末です。

  「かぐやしねー」と。

                      [「“お笑い”かぐやしね」の一節]

 お疲れさまでございました。申し訳ございません。さんざん引っ張って、この体たらくでございます。愚生の方もかなり疲労気味でございます。甘いものでもとって、気を取り直し、出直します。