《停念堂閑記》35

「日比憐休雑記」5

 

 《“笑い”の構造》5

 

 〔何かをばかにした時〕

 

 〔おかしさ〕や〔うれしさ〕からくる“笑い”と比べて、あまり人から好まれる“笑い”ではないのが、ここで取り上げる〔何かをばかにした時〕に出る“笑い”である。

 いわゆる「人を小馬鹿にした“笑い”」・「優越感による“笑い”」などと言われる類の“笑い”である。他人に遣られると無性に腹が立つが、自分がやるのは快感でり、日常生活の中にあっては、結構やっていることが多いようである。

 「他人の不幸は、蜜の味」なんて言われたりしているが、誰にでもこの種の感情はあるようである。(持ち合わせない方には、失礼致します。どうぞ御海容のほどをお願い致します。)

 現代社会は、ストレス社会などとも言われることがあるが、ストレスを溜め込んでおられるお方が大勢いらっしゃることと思われる。おそらく、“笑い”は、ストレス解消に効果的と思われるが、中でも、この〔何かをばかにした時〕に出る笑いは、ストレス解消の特効薬となっている場合が、多い気がする。偉そうに小五月蝿いことばかり言っている上司が、大ミスでもしでかそうものなら、部下の間では、この〔何かをばかにした時〕の“笑い”の嵐が襲来すると言うものであろう。帰りがけの居酒屋で、この〔何かをばかにした時〕の“笑い”を肴にストレスの発散で大盛り上がりであろう。これで部下のストレスが解消するのであれば、上司は頃合いを見計らっては、時々ポカをやった方が賢いというものである。きっと、仕事の能率がグーンと上がること間違いない。(不謹慎なことで、恐縮です。どうぞ御海容のほどを。)

 テレビのクイズ番組などに、すごく可愛いが、おバカのタレントを出演させているのをよく目にする。たっぷりおバカ振りを発揮させ、視聴者に優越感を与えて、この〔何かをばかにした時〕の“笑い”を起こさせて、視聴率を 稼せごうと言うのであろう。おバカタレントさんの方も、おバカを売り物にして、たっぷり稼でいる人もいることであろう。まあ、番組を作る側も、おバカを演 じる側も、それを見て優越感から笑う側も、三者お互い様といえばお互い様で、馬鹿馬鹿しいと言えばそれっきりであるが、これなりに丸く治まっているのかも 知れない。

 したがって、“笑い”を起こさせるネタ作りにおいては、この〔何かをばかにした時〕に出る“笑い”に繋がる要素を有効に使用することも肝要 である。但し、この“笑い”は一歩間違うと、不愉快な模様を描く恐れがあるので、この点について十分の配慮が必要とされるであろう。(つづく)