《停念堂閑記》38
「日比憐休雑記」8
《“笑い”の構造》8
〔笑わせ方の基本〕3
“笑い”を誘う表現方法を、大きく分けると行為と言葉に分けられる。
行為は、表情・身振り・手振り・話し振り・息遣いなどのことである。
【表情】
まず、表情は相手の視覚にうったえる手段である。であるから、いかなる表情をもって、視覚にうったえるか、と言うことが課題となる。
表情は、主に顔面に現れる。具体的には目付きと口形および顔の筋肉の動かし方である。
目は口ほどにものを言うといわれているように、人間の感情表現上重要な役割を果たす。喜怒哀楽は如実に目に現れるところがある。嬉しさの眼 差し、怒りの眼差し、悲しみの眼差し、楽しさの眼差し、正直そのものの眼差し、疑いの眼差し、誤摩化しの眼差し、戸惑いの眼差し、自信満々の眼差し、怯え た眼差し、懇願の眼差し、脅迫の眼差し、軽蔑の眼差し、困惑の眼差し、驚きの眼差し、小馬鹿にした眼差しなどが上げられる。
このように多くの表現があるように、目付きが表情表現に重要な役割を担っているが、目に連動して、口の形がそれらしさを表現する。喜んでて る時の口形、怒っている時の口形、悲しい時の口形、楽しい時の口形、驚いた時の口形、納得した時の口形、不服な時の口形などその時々の感情を表す口形があ る。
また、同時に顔の筋肉が反応する。額に皺を寄せたり、頬をひくひくさせたり、鼻の穴を広げたりする場合がある。
“笑い”を大きくさせる表情はどのようなものか、と言うと、これは扱う“笑い”のネタによるし、その時のシチュエーションが関係するし、笑 わせようとする側の個性も大きく関係してくるものと思われるので、一言で説明するのは困難である。いろいろな場面に備えて、不断の鍛錬が必要とされる。
【身振り・手振り】
身振り・手振りも、相手の視覚にうったえる手段である。
身振りは、文字通り、頭のてっぺんから爪先にいたる体の全てを使う感情や意思伝達の表現動作である。手振りは、手の動作による感情や意思伝 達の表現方法である。手は実に優れたこの能力を持っている。一定のルールをキチンと整備すれば、言葉に准ずる伝達手段となるし、時には、言語を超える能力 を発揮する場合がある。パントマイムなどは、一切言語を用いず、身振り手振りだけで、“笑い”をとる芸である。
身振り・手振りも、その時々に合う最適なものを、とっさに演じられるように、常々訓練しておくことが必要である。
以前に柳家金語楼と言う噺家がおられた。超有名人である。自分の顔を商標登録していたと言われるており、その表情は正に商標登録に値したもので、特に、金五郎の蛸はもう絶品であった。
また、身振り・手振りを動作全体に拡大した場合、何と言っても、“笑い”にドタバタは欠かせないようです。ドタバタはいろんなところで展開されていますが、一世を風靡したのは、やはり欽ちゃん・二郎さんのドタバタですね。お茶の間も、老若男女もうひっくり返って楽しんでましたよね。段々年を経て来ると、二郎さんなんぞ、もう息を切らせて、背中を丸めて、走り回っていました。“欽ちゃん走り”も子供達がよく真似てやってました。今は、ご時世というものでしょうか、“コント55号”のような迫力のある動きの“お笑い”は見かけなくなり、“ダチョウ倶楽部”の竜ちゃんの熱湯シーンもとんと見かけなくなって、淋しくなりました。
さらに、“ドリフターズ” ですね。『8時だョ! 全員集合』などは装置も結構大掛かりなもので、長さんが開幕と同時に「オイーッス」と登場すると、会場は一丸となって、「オイーッ ス」と返す。間髪おかず、長さんの「もう一発、オイーッス」の第二弾が飛んで来る。最初からもうノリノリでした。あとは、おなじみのカトちゃん・ケンちゃんをはじめ、工事さん、トロくさいブーさん、「なんだよー モンクあっか バカヤロー」の注さん、芸達者の面々に、時に“キャンディーズ”も交えたりして、ドタバタドタバタ盛り上がってましたよね。中でも、長さんの“ゴリラおどり”はもう絶品でしたね。あれが始ってしまうと、もう誰も手出し不可能の状態でした。カトちゃんの、“ヒックショーン”でも止められなかったのではなかろうか。もう、あのようなドタバタには巡り会うことは無いのでしょうね。
【話し振り】
話し振りについては、嬉しそうな話し振り、怒っているような話し振り、悲しんでいるような話し振り、楽しんでいるような話し振り、テキパキ 歯切れの良い話し振り、ボソボソと歯切れの良くない話し振り、抑揚のない平坦な話し振り、自信満々の話し振り、これ見よがしの話し振り、遠慮がちな話し振 り、高を括った話し振り等々、多種多様に表現されているように、実に多様性に富んでいる。感情や意思伝達に関わる最重要媒体である。それだけに多様性に富み、個体差も 加わると、簡単には行かない実に解説しずらいことに属する。したがって、例の如く、小難しいことはさておくことにする。ここでは、話し振りは、人間の感 情・意思伝達に関する最も重要な媒体である点を確認し、“笑い”の表現としては、上記同様に扱う“笑い”のネタによるし、その時のシチュエーションが関係 するし、笑わせようとする側の個性も大きく関係してくるので、その場の空気を的確に感じ取り、それに合った各自の話し方をすることが肝要となるのであろう。
【息遣い】
息遣いも、人間のその時々の感情・心境・健康状態などを表現する媒体である。高額宝くじに当選したり、競馬で 見事に大穴当てた時の表現としては、意気揚々とした勝馬のような息遣い(?)が必要だし、溺れている場合には、水面辺りでアップアツプしている時と水中で もがいている時との呼吸の仕方は当然違うだろうし、風邪を引いて鼻が詰まった状態と、鼻水が出てしょうがない状態の時の息遣いも当然異なると思われる。息 遣い一つで、結構笑いが発生する場合も珍しくはない。
それから、付け足しのようで申し訳ないのですが、噺家さん、芸人さんの名前に関することがあります。ひろく芸名といって良いのでしょうか。
とにかく、噺家さん、芸人さんにとって、極めて大事な存在のものです。落語家さんの世界では、代々襲名されているものもありますが、当人限りのものも見られます。
芸名については、自分でつけるか、他の人に付けてもらうかでしょう。自分でつける場合は、色々な事情のもとで決断することになるのでしょう。他の人に付けてもらう場合は、お師匠さんをはじめ、個人の色々な事情の元で、付けてもらうことになるのであろう。結果、上手くいった場合と、そうでなかった場合もあることでしょう。
一例として、“たけし軍団”の場合を見てみよう。(「ウィキペディア」の「たけし軍団」に紹介されている「メンバー」による。)
* つまみ枝豆
* 松尾伴内
* ダンカン(元々は立川談志の弟子。現在の芸名は立川一門当時の自身の高座名「立川談かん」に由来する)
* ラッシャー板前
* グレート義太夫
* 井手らっきょ
* 〆さばアタル
* 山崎まさや(元ジョーダンズ、元々は東八郎の私塾の門下生。東の死後志村けんの付き人を務めた)
* 東京名物大神本舗五百年(旧名:ルビー浅丘モレロ→大神クヒオ)
* 赤P-MAN
* マキタスポーツ
* ヤチョウの会(鳩山来留夫・ケンタエリザベス3世)
* アッチャンズ(近藤夢・近藤六)
* プチ鹿島(旧名:俺のバカ)
元メンバー [編集]
* 秋山見学者(秋山大学) - 引退
* 浅草キッドブラザース
o 一文字隼人(ペカソチャルマンチャイ) - 引退
o かに道楽落ち太 - 引退
o 亀頭白乃介 - 引退
o 佐竹チョイナチョイナ -引退
* 亜仁丸レスリー - 引退
* 雨ガッパ(旧名:似背大周、ニセ大周) - 引退
* 太田コースケ(太田浩介に改名し俳優に転進、軍団を離脱した現在もオフィス北野所属)
* 大前田権十郎 - 引退
* 大森うたえもん
* 楽屋の大将 - 引退
* 岩クレイジー
* 九州男児 - 引退
* こてっちゃん馬場
* ショー小菅 - 引退
* 新大久保清 - 引退
* すがぬま伸 - 引退
* 頭突王 - 引退
* 芹澤名人
* たけし軍団セピア
o 大阪百万円 - 引退
o キドカラー大道 - 引退
o クロマニヨン吉川
o サード長嶋 - 引退
o 誰なんだ吉武(予備公) - 引退
o 水島新太郎(おぼつちやま)
* 谷体調 - 引退
* 食べ放題飲み放題 - 引退
* チャイ - 引退
* トカレフ林 - 引退
* ドラゴン中尾 - 引退
* 熱海マッサージ - 引退
* ノーカット星 - 引退
* バター犬たろう(2001年、死去)
* 古田古 - 引退
* 北海ジャンジャン - 引退
* 負古太郎
* 元日本兵 - 引退
* 柳ユーレイ(柳憂怜に改名し俳優に転進、軍団を離脱した現在もオフィス北野所属)
* よろしくゲレーラ - 解散
これ全部が、たけしさんの命名になるものであったのかどうか存じあげませんが、中にはと申しますか、はたまた、殆ど全部と申し上げた方が正解なのでしょうか、悲惨なのが多いと思いませんか。若い時は、勢いで構わないかも知れませんが、年寄になったら、それはもう、悲惨ですよ。
芸名は、他に本名がありますから、事情により使い分けられますが、生まれた子供の命名は考えておく必要がありそうです。赤ちゃんの時は、も うとても可愛くてしゃれた名前でも、この頃はみんな長生きだから、90歳100歳は珍しくはありません。三桁になれば、大変結構なことですが、病院の受付 で順番待ちをしていて、名前呼ばれてた時、ときならず受けちゃったりしますからね。〈つづく〉