《停念堂閑記》55

「停念堂寄席」46

 

《 あの世談義 》

 

[その2—2]

 

(「停年堂閑記」37のつづきです)

 

  ※[「与太郎の何じゃもんじゃ寿限無心太丼」とは レシピ]

1ホカホカのユメピリカのご飯を 丼に少しよそう

2その上に 心太を薄く敷く

3その上に マグロの漬けを敷き詰める 

  4再び ユメピリカのはかはかご飯を幾分盛る 

5その上に 心太をエべレストの如くたっぷり盛る

  6ブルーハワイシロップを タップリかける

7その上に トンカツを置く

   8国民食 カレーをかける

9その上に ソフトクリームを乗っける 

10更に 芥子・イカの塩からを隠し味とする納豆をかける

11その上に たっぷりのトマトケチャップをかける

12その上に チンスコーのおろし粉をパラパラーとかける

   13更に ポテトチップスの袋の底に溜まったクズもかける 

   14そして 七味と黒胡椒もかける 

15最後に ガリガリ君を テッペンにズブッとおっ立てる

 

   [与太郎の「何じゃもんじゃ寿限無心太キーワード

ホカホカのユメピリカのご飯 心太 マグロの漬け 

   ユメピリカのほかほかご飯 心太エべレスト ブルーハワイシロップ  

   トンカツ カレー ソフトクリーム 辛子・イカの塩から隠し味の納豆    

   たっぷりのトマトケチャップ チンスコーのおろし粉 

ポテトチップスのクズ 七味と黒胡椒 テッペンにガリガリ君 

   の何じゃもんじゃ寿限無心太

 

隠:「本当ですか 迂闊に乗るとえらいことになるのではないですか

  塩辛があったら 塩辛ベースに なんでも手当たり次第に乗っけて

  <なんじゃもんじゃ寿限無塩辛丼> とか

  煉りガラシがあったら 練りガラシをベースに

  <なんじゃもんじゃ寿限無練りガラシ丼> とか

  思っただけで もう 救急車ですよ」

八:「ご隠居 ご心配なく 今日は シンプルにいきますだ

  トーバンジャン イワシナメロー風カレーナポリタンでいくかなー」

隠:「それで シンプルですか

  折角のお誘いですが 今日は ご遠慮して

  おばーさんと あっさりとソーメンでも 頂くことにしますから」

八:「ソーメンですかい

  ソーメンは やっぱり タレが肝心ですだよ

  カツブシと昆布のミックス出汁をベースに致しやしてね

  あとは 好みによって 調節するといいですだ

  醤油 味醂は定番だな

  これに ワサビは 最も一般的でやすが

  大根おろしもよおござんすよ

  辛いのが得意な方は タバスコね 効きますぜ

  ニンニクおろしも パンチが効いて なかなかの もんですよ

  まー 好みによってね 何でも試してみると良いだよ

  マヨネーズ トマトケチャップ ブルドックソース 

  甘党の方は 蜂蜜 練乳 チョコレートミルクもよおござんすよ

  こってり系の方には やっぱり納豆だな 

  隠し味に イカの塩辛は欠かせないな

  洋風好みの方には コーヒーを混ぜてもね なかなかいけますよ

  ノンベーさんには 日本酒 焼酎 ウイスキー ビール をはじめ 

  通の方には ワイン ブランデー 

  強い方には テキーラ ウオッカは良く効きますぜー

  そうそう 濁酒を忘れてはいけませんよ」

隠:「ちょっと 八さん いい加減にしてくださいよ

  それ以上いきますと 本当に 救急車ですからね

  はやいとこ 皆さんで お出かけ下さい」

与:「ご隠居行は行かねーだか いまいち調子が出ないな

  おばあさんは どうです」

隠:「余計なこと言ってないで 早く 行って下さいよ」

熊:「それでは ご隠居 行ってめーりやす」

隠:「まったく あの3人組の味覚はどうなってるんでしょね」

 

八:「ご隠居 ただ今 戻りました 

  食った食った もー食えねーだよ」

熊:「ご隠居 何食って来たか 聞きてーだか」

与:「おらが考えだした <あの世丼>」

  ご隠居に 言って聞かせるべー」

隠:「ストップ ストップ ストップ

  それ以上は いけませんよ ストップです

  まだ<あの世>には 行きたくありませんから」

八:「ご隠居 まるまる<あの世>とまでは 言わないだよ

  入口辺りまででいーだよ 

  そしたら 与太郎の疑問も解消するだから ダメかね」

隠:「ダメです うっかり行きっぱなしにでもなったら どうします

  あなた等に 入口の状況を 伝えることが出来なくなりますよ」

熊:「それもそうだな この歳だ そんじゃー またの機会とするか」

隠:「ダメですよ お断りします またの機会など

  <あの世>の入口がどんなか そんなに気になるのでしたら

  あなた等3人で 行ってみたらどうです」

熊:「ご隠居 そればダメですだ

  オラッチは 折角行っても けーって来る迄に

  ぜーんぶ忘れてしまうだ 

  意識が戻って 目ー覚ましたら 何んにも覚えていねーだよ

  だから オラッチでは 役に立たねーだよ 

  やっぱり これはご隠居でなくては」

隠:「いい加減にして下さいよ あなた達

  私はね もう行きぱなしになっても なんの不思議もない年頃ですよ

  一歩間違えると<あの世>の片道切符ですから 冗談ではないですよ

  <あの世>の入口が気になるのでしたら 

  あなた達 デジカメとナビを持参して出かければ 良いではないですか

  デジカメで写真を撮って ナビに案内されて 帰ってこられるでしょ」  

与:「ご隠居 それは甘い考えですだ

  自慢じゃーねーが オラ達は 

  だーれもデジカメだのナビなどと言う代物には 縁がねーだよ

  使い方が 全然 分からねーだよ パーフェクトの機械音痴

  全く 意味ねーだよ

  やっばり この役は ご隠居をおいて他ねーだよ」

隠:「ダメだと言ったら ダメです 絶対に

  所詮<あの世>なんて 誰かが適当に言い出したことですから

  そんなことに命を懸けられませんよ」

与:「そんなことでは ダメですだ

  実験を重ねて ちゃんと 証明出来てこそ 

  真実が分かろうというものだべ

  日々 実験に実験を重ね 真実に迫る努力無くして 

  科学は成立しないだよ そうでなくては 日本の将来はないだよ」

隠:「日本の将来ですか」

与:「いやいや 日本だけではねーですだ

  世界平和のために ユネスコに認めて貰わなくては ならねーだよ」

隠:「ユネスコにですか 世界文化遺産と間違えていませんか

  何だか 話が またまた 明々後日の方向に行ってませんか」

熊:「与太郎 おめーが口出すと 直に明後日向くのでいけねーや

  ここは一番 オイラに任せろ

  ご隠居 与太郎にかまうとろくなことにならねーので

  お手間を取らせて 恐縮だが <あの世>の入口の話をまとめてもらう分  

  けにはいかねーでしょーか」

隠:「そーですね しかし 私もこのような話題は 得意な方ではないので   

  そう簡単には 参りませんよ」

熊:「ご隠居 それはもーとーっくに 解決済みですよ

  先に 前置きをしたではねーですか なんの問題もねーですよ」

隠:「それは そーですが あまり気が進みませんね」

熊:「何のしんぺーもいりやせん

  責任は みんな与太郎にとらせやすから

  どんな ややっこしー事を言って来るやつがいても

  与太郎に応対させやすから 与太郎苦情処理の達人ですから

  どんな奴でも 与太郎と一言二言交わしたら あきれけーって 

  帰ってしまいますから で-じょーぶですだ」

隠:「一言二言交わしたらね

  毎日のように つき合っている 私は どう言う存在なのでしょうね」

熊:「ご隠居 余計な疑問を持ってはいけませんよ

  気楽ーに 参りましょう 気楽に」

隠:「気楽にねー

  では そういう事でいきましょうか

  それでは 基本的な事柄を確認しておくことにしましょう

  与太郎さん <あの世>の基本的認識を まず 一つ上げて下さい

与:「ご隠居 学校モードで やるんですかい

  オラ こう言う設定 きれーではねーだよ

  だけんど 一つ 注文があるのだけんど 言っていいだか」

隠:「どうぞ どうぞ 梅屋さんのなんじゃもんじゃ寿限無丼関係以外でした 

  ら 何でもどうぞ」

与:「そのー 一方的に指名するのではなしに

  全員を対象に 質問をして 

  分かった人は ハーイと元気よく手を挙げて 

  それから ご隠居が 誰かを指名するようにして欲しいだよ」

隠:「なるほどね その方が能率的かも知れませんね

  それでは 早速 いきますよ

  <あの世>の基本的認識について知っている人は 元気よく 挙手して下

  さい」

与:「ハイ ハイ ハーイ」

隠:「それでは 与太郎さん どうぞお答え下さい なお ハイは一回でいい

  ですよ」

与:「まず <あの世>とは 死後の世界であることでーす」

隠:「良く出来ました 正解です

  それでは 今度は ちょっと難しいですよ

  <あの世> すにわち 死後の世界が なぜ注目されるのでしょうか」

与:「ハイ ハイ ハーイ」

隠:「与太郎さん 言ったばかりでしょ

  ハイは 一回で良いのですよ 分かりましたか」

与:「ハイ ハイ 分かっただよ」

隠:「またまた 一回で良いのですよ 一回で

  それでは 与太郎さん どうぞ」

与:「人は 老若男女 貴賎貧富を問わず 死から逃れることはできねーだよ

  何時の日にか 必ず死亡するわけだよ

  そこで この死をどのように捉えるのか と言うことが問題だよ

  それは それは 色々な捉え方があると言って良いだよ  

  10人いれば 10の捉え方 100人いれば 100の捉え方があるだよ

  それぞれに 微妙な違いがあるだよ

  それについての詳細は これから ご隠居さんから 説明があるだよ」

隠:「与太郎さん あなた ややっこしい話になると 私に振るのですか

  どこで そんな技術を覚えてきたのです

  私の前に 熊さん 八さんの意見を聞きましょうよ」

与:「ご隠居 それは無理と言うものだべ

  やつら とっくに 昼寝してますだ

  ちっちぇー頃から 授業が始まったら とたんに寝ちまう質だから」

隠:「困った人たちですね

  折角説明しても 何にもならないではありませんか

与:「そりゃーそうですが こいつら 聞いてる時だけですだ 

  分かった顔してるのは 次の日は けろっと みんな忘れてやすから

  起きていようが 寝ていようが 大差はねーだよ」

隠:「と言うことは 与太郎さんと差しでやると言うことですか」

与:「いやいや そう 簡単にはいきませんよ

  オラだって 自分が喋っている時は さすがに 寝てはいやせんが

  聞く側になると 何の保証もねーですだ なんたって 3人組だから」

隠:「と言うことは 私の独り言となるのですか」

与:「早い話が とかく そう言う事態に陥りがちになるなー

  そんじゃー ご隠居 やってらんないよねー 

  どうです この際 オバーさんに 聞き役を頼んでは」

隠:「私とオバーさんと2人で <あの世>談義ですか

  ちょっと ぴったり し過ぎではありませんか」

与:「そう言われれば びったり し過ぎで 笑える事態ではなくなるなー

  よし こうなりゃー やろーどもを叩き起こすべ」

隠:「与太郎さん 乱暴してはいけませんよ

  本当に 殴ったりしては

  目を覚ました途端に 大喧嘩は こまりますよ」

与:「ご隠居 こいつらは叩いたくれーで 目を覚ますやろーではねーですだ

  下駄で 弁慶の泣き所を 思いっきり 蹴飛ばさなくては」

隠:「ちょっと 穏やかではないですね お手柔らかには できませんか」

与:「方法が 無い訳ではないだが そこは ご隠居と相談と言うことになる

  な」

隠:「エー 私と相談ですか」

与:「そーだんですだ」

隠:「あなた ここで 駄洒落ですか」

与:「そーなんですだ」

隠:「こんなことしていても しようがありません 先へ進みましょう」

与:「弁慶の泣き所を思いっきり蹴飛ばして 目を覚まさせると

  目は覚ますが いきなり 喧嘩になるな

  一方 穏やかに目を覚まさせるには ご隠居のご協力が必要になるだよ

  ご隠居 どっちにしますべ」

隠:「どっちにしますべ と言ったって 喧嘩は困りますから

  協力するより無いではないですか」

与:「では ご協力をと言うことで行きやすが おねげーしますだよ」

隠:「協力はしますよ どうすれば宜しいのです」

与:「実は 熊も 八も ぐっすり寝てはいますが その脳下垂体の一部が覚 

  醒しているだよ そこをね ちょちょっと 刺激すると やつらは

  とたんに 目を覚ますだよ ちょっと やってみるだよ

  熊 八 コーヒーとケーキにするぞー」

熊:「なに コーヒーだと」

八:「ケーキだと」

与:「ほらね ご隠居 こいつ等は 食い物の話になると

  途端に 目を覚ますだよ」

熊:「コーヒーとケーキ どこにも ねーでねーか」

与:「3時のお茶の時だよ」

八:「3時のお茶 まだ間があるでないか 熊 もーひと眠りするぞー」

隠:「また 寝てしまいましたよ」

与:「ちょっと 刺激が弱かっただなー

  こう言う時の切り札は 現物のほかねーだよ

  匂いがね 奴等の脳下垂体を くすぐるだよ」

隠:「ちょっと 与太郎さん 私の協力とは

  コーヒーとケーキと言うことだったのですか

  なにか てい良く ひっかかった気がしないでも無いですね」

与:「なんなら 弁慶の泣き所でも よーございますよ」

隠:「ちょっと 与太郎さん 驚かさないでくださいよ 本当に

  協力致します 協力いたしますから」

与:「ほんじゃー コーヒーとケーキの方を宜しくおねげーしますだ」

隠:「それでは オバーさんに頼まなくては」

与:「オバーさんが コーヒーの用意をしてる間に

  オラが駅前の洋菓子屋へ ひとっ走り行って来やすだ

  ヘー その お足の方を どーぞ宜しく」

隠:「与太郎さん あなた そう言うところは まったく 卒が有りませんね

  では お願いしますよ」

与:「すぐ 戻りますから 行って来やす へー」

与:「ご隠居 行って来やしたよ はい ケーキ6個」

隠:「6個ですか?

  あなた達3人組とオバーさんと私ですから 5個で足りますよ」

与:「ヘー 1個は オラのお駄賃と言うことで へー」

隠:「まーまー そう言うところは 本当に抜かりはありませんね

  それでは 早速ですが お二人を起こして下さい」

与:「それでは オバーさん コーヒーをおねげーしますだ」

婆:「はいはい 入っておりますよ 皿とフォークもどうぞ」

与:「お手数をお掛けしますだ

  皿に チョコケーキを載せましてね

  オラの分は 豪勢にチョコケーキとフルーツケーキのダブルと

  コーヒーは ここに置いてと そして 手のひらで そよそよと

  香を送るだよ」

熊:「何だ何だ もう3時か」

八:「オラ 砂糖は3杯だよ」

隠:「あなた達 実に 目覚めが良いですね 驚きますね」

熊:「こう見えても オイラ達は タヌキ眠りの達人ですだ」

隠:「えーっ タヌキ眠りって タヌキ眠りだったのですか」

与:「ヘー 熊がやってもタヌキ眠り ハチがやっても タヌキ眠り」

隠:「びっくりですね 何時打合せをしたのです」

与:「打合せなど不要ですだ オラ達3人組にとっては

  その 世間で言う 阿吽の呼吸つーやつですだ

  その場の流れで つーっと行くだよ」

隠:「全く 驚きましたね まんまんと 引っ掛かりましたわ

  以後 気をつけなければ

  ところで コーヒーとケーキを 食べ終わる前に

  <あの世>談義を 進めなくては 意味ありませんね

  食べている間は 寝てませんからね

  早速 続けることにしましょう

  誰でもが 必ず直面する<死>の捉え方に着いてですね

  極めて 多様性を含む課題ですから 

  そもそも どの切り口から 取りかかるか と言う問題がありますが

  あまり 堅苦しいのは止めにして 

  気軽に取り組めることから始めることにしましょう

  <死>についての捉え方として 割合共通して注目されることには

  どのようなことがありますかね

  熊さん あなただったら<死>に関して どのような事を感じたり 考え 

  たりしますか ケーキをほうばっているところ 恐縮ですが」

熊:「突然 あっしでやすかい ケーキはやっぱりチョコが命だな

  この味さえ良ければ 多くはいらねー チョコっとでいいだよ

  しかし 死んじまったら こうしてケーキも食えなくなっちまうだな

  と言うことは 早い話が

  《死んだら一巻の終わり》と言うことだな きっと」

隠:「そうですね そのような捉え方が 割合一般的のようですね

  死亡したら その個人の活動が全て停止すると言う捉え方がありますね

  八さんだったら どうです」

八:「オラか チョコも大事だが ケーキの命は やっぱりスポンジよ

  チョコだけではケーキと言えねえだよ しかし スポンジだけでも

  ケーキと名乗れるのよ だから ケーキの命は スポンジだべ」

隠:「ケーキの命ではなく 人間の命が亡くなると言うことですよ」

八:「あー そっちね 

  オラは 死んでからも ケーキを食べるだよ

  <あの世>へ行ってからも うめーもの いっぱい食うだよ」

隠:「八さんの 食い意地は たいしたものですねー

  八さんのように 死ん後でも なお活動が続行できる 

  あるいは そうありたい と願う人も多いようですね

  すなわち 死亡した後 その個人の活動が なお 続行するとか 

  あるいは 将来 活動を再開出来るかも知れない 

  とする捉え方があるようですよ

  ある人々が その個人の活動再開を信じて 死亡して ミイラ化してし

  まった死体を ずーっと保存し続けていた と言う事件がありましたし

  それから 科学の進歩を信じて 何時か復活できる日が来ると

  冷凍保存されている事例がありますよ

  ちょと 意味合いが違うかも知れませんが

  文豪 夏目漱石の脳は 東大病院に保存されているそうですよ

  将来 何等かの形でよみがえって

  “貴方は 犬である”を著すかも知れませんね」

与:「<オラ拝は 与太郎である>は ダメかね」

隠:「それは 与太郎さん自身が書けば良いことではないですか   

  きっと ベストセラーになりますよ

  ところで 与太郎さんの場合はどうですか」

与:「オラの場合だすか オラの場合は どっちかと言えば

  やっぱり フルーツの鮮度だな イチゴにしろ メロンにしろ」

隠:「また ケーキに逆戻りですか

  なんとか 食べ物からの発想の脱却が できませんかねー

与:「ダメですだ それはダメです 不可能です 断言

  食こそ オラ命 と言うもんだべ

  <あの世>では 食べ物以外は 何にもいらねーだよ」

隠:「凄まじい こだわりですなー 恐れ入りました」

与:「んだす オラの場合は 一巻の終なんて とんでもねーですだ

  一巻の終わりになっては 食べることも 一巻の終わりだよな

  ホワイトクリーム・ロールケーキも1巻食べ終わったら 

  別の抹茶クリーム・ロールケーキと行くだべ

  その次には フルーツ・ロールケーキと行くだべ

  一巻で終りなんて とんでもねーだよ

  そんなのは 勘弁ならねーだよ

  何巻でもいくぞー <あの世>は 食の世界だ バンザーイ」

隠:「分かりました そーですね 

  自分の一番すきな<あの世>が正解かもしれませんねー

  ところで 八さん 与太郎さんのように

  死亡しても 生前と同じように その個人の活動が継続する

  と言う<あの世>を想定する場合もあるようですが

  同じく <あの世>でも個人の活動が継続すると言っても

  また 別の捉え方があるようですよ

  例えば その考えの基礎となっているのは

  人間を構成しているのは 肉体と精神であるとする考え方のようですよ

  肉体は死亡と同時に 活動停止になると言うことは 

  目視的に明らかになりますが

  精神の存在の方は 目視的に確認することが難しいわけです

  すなわち 科学的に 精神の消滅を証明することが 難しいようですよ

  ここに 精神の死滅を否定できない側面があり

  精神の存続を信ずる余地が残されている

  と考える方が おられるようですよ」

与:「人間は 肉体と精神によって出来ていて

  肉体は死滅しても 精神は<あの世>で 存続すると言うだか

  なんだか ややこしいだな」

隠:「すなわち この精神を 魂 霊 霊魂などと称して

  もしも<あの世>があり 死後<あの世>に行くものとしますと 

  <あの世>で活動が続行する と言う論理のようですね

  このような論理が 信じられるか否かと言うことが 

  当然問題として存在します 

  信じられない人にとっては <あの世>を意識する必要は無い分けです

  信ずる人にのみ <あの世>に関わる諸事が気に掛かることになる   

  分けですね

  すなわち <あの世>は存在すると言うことを信じる と言う前提で

  <あの世>が 存在すると言うことになるのでしょうね」

与:「そーそー 信じることが <この世>で一番大切なことなんだよ

  信じられることが多いほど 人は豊かに生きて行けるのだよ

  何もかも 信じられなくなると

  もー おしめーちゅーもんよ

  ねー ご隠居

隠:「そのとおりですね 信じていればこそ

  <この世>に存在できるわけですからね

  人を見たら ドロボーと思え と言う状況は つまりませんからね」

与:「そーですとも オラ <この世>で一番 信用できるのは

  やっぱり ご隠居だな ご隠居をおいて他 ねーな

  ご隠居は オラを裏切ったためしがねーだよ

  今日も ケーキ ひとより1個 多かったし

  ご隠居 明日は 何にしますかねー」

隠:「結局 そこへ辿り着くのですか

  そーだ 与太郎さんは 時々 危ない

  食べ物に関わることについては 要注意

  と言うことを かたく信ずれば良いわけですね

  さて 次に <あの世>は どんなところか と言う疑問がありますね

  八さんと与太郎さんの<あの世>は 

  かなり具体的なイメージが固まっているようですが 

  熊さんは 死んだら一巻の終り派と言うことで良いですか」

八:「ご隠居 オイラ達3人組は こう見えても

  めっぽー 民主的ですだー どんなことでも 民主的に決めるだよ

多数決と言うやつだな

  少数意見についても 尊重どうのこうの言うが

  結局のところ 態勢は 多数派の意見と言うことだな

  ジュレミ・ベンサムの<最大多数の最大幸福>と言うやつよ

  だから この場合 3人組においては 2対1で <あの世>あり

  となるわけよ 何らもんでーねーだよ 

  オイラは こー見えても 一つ事にこだわらねー性格よ

  今日は コーヒーとケーキであっても

  明日は 番茶に餡子草団子で 全然 もんでーねーだよ」

隠:「結局 落ち着くところは そこですか

  3人組の結束は 恐るべきですねー

  ところで <あの世>と言うものは 

  <あの世>と言うものが 何時からか存在していて

  それを 誰かが発見して これが<あの世>と言うものです 

  と人間社会に公表したと言う存在ではなく 

  誰かが何らかの経緯 必要によって 創作して 広めた 

  あるいは広まったもののようですから 

  創作者の違いによって いろいろ異質なものとして存在しているし

  また 人々の間で伝承されて行くうちに 色々と変形したと思われます

  だから <あの世>とは これである と言う固定的存在ではなく

  あれこれ流動性に富む形で存在しているものと思われますね」

与:「と言うことは 10人いれば 10の<あの世>

  100人いれば 100の<あの世>が存在して 良いと言うことだな」

隠:「そうだと思いますよ

  ですから その所在にしても 天上であると信じている人もあれば

  地下深くであると信じている人もあるようです

  亡くなったお母さんが 遠い空の上から 子供の成長を見守っている 

  と言うようなことを よく聞きますが 

  これは まさに <あの世>の所在は 天上と言うことなのでしょうね

  また 浄土教では 阿弥陀様が来迎雲で 死者をお迎えに来る 

  と言うことが言われていますが

  この場合にも <あの世>の所在は 天上と言うことなのでしょうね

  ところが 中国兵馬俑に見られる軍人の土人形は 

  死亡した皇帝が地下にいることを前提として 

  その護衛のために 地下に埋められたものなのでしょうね

  この場合 <あの世> は地下にあると言うことなのでしょうね

  また 秦陵地下宮殿や明の十三陵には 生前と同じように生活が可能な 

  地下室が設備されており   

  <あの世>の所在は やはり地下深くと信じられているようですよ

  またまた 仏教では死んだら 三途の川を渡って

  <あの世>に辿り着くように言われていますが 

  三途の川を渡りきったところが いわゆる彼岸と言われるところで

  彼岸所在は 三途の川の向こう側と言うことで 

  この場合は 天上でも 地下でも ないようですね

  <この世>に類似した<あの世>が 

  異次元に存在することを想定しているのでしょうかね」

 

与:「ひらめーた ひらめーただぞ 

  ご隠居 三途の川の対岸が 

 彼岸 すなわち<あの世>と言うことになるだよな

 そんじゃー 三途の川のこっち側は  <この世>と言うことになるだよな

<この世>と言うことは <この世>と言うことだよな

と言うことは <この世>の何処かに 三途の川のこっち側があると言うことだよな

いったい 何処だべ

そこが 何処だか分かれば そこへ行けば 対岸が見えるだべ

と言うことは <あの世>の入口の様子が 分かろうと言うものだべ」

隠:「与太郎さん 良いところつきますね その通りですね」

与:「こうしちゃー いらんねーぞ

 熊 八 早速 デジカメとナビを手配するべ

 ヨトハシとヤマタとどっちが良いかな

ポイント・カード忘れるなよ

早めに 行かなくてはな

 使い方 覚えるのに ひとの何倍か かかるからな」

八:「取り敢えず どの辺りを探したら良いべな

  近場の墓地でも 行って見るべか

  やっぱ 川縁の墓地からだべな

 多摩霊園はどうだ 多摩川も近くを流れてるし 立地条件は良いぞ」

熊:「ちょっと 遠いが 青森下北の恐山は どうだべ 雰囲気はかなり整ってるだぞ

  それとも 岩手宮古浄土ヶ浜の方が 良いだべかな」

与:「どっちにせよ 設備と調査費がかかるな

  取り敢えず 宝クジでも買うか

  それとも 文科省へ 研究調査費の助成金申請でもするか」

隠:「宝クジと科学研究助成金を天秤に掛けるのですか

  ちょっと 落差を感じますが」

与:「いやいや ご隠居 研究者の中には けっこうおりますだ

  研究をするには かなりの費用が必要とされるらしいだ

  しかし 経済大国と豪語しながら 政府は 科研費は出し惜しむだよ

  1位で無くてはダメなのですか 2位はダメですか なんて

  アホ丸出しの大臣がいたりするんだから

  こんなアホ相手にするくらいなら 

  一層のこと 宝クジの方が当てになる と言うもんらしいだよ」

隠:「そうですね あの方 このごろトンと見なくなりましたね」

与:「その程度の 然るべきところに 落ち着いたのとちゃいまっか」

隠:「与太郎さん 興奮すると 関西弁になりますね」

与:「そーでんねん 頭に来た時とおちゃらける時には

   大阪弁が一番やで ほんまやで」

八:「大阪弁は さて置いてだよ

  宝クジも科研費も 全く 当てにならねーだよ

  そーすると ものは 相談と言うものだが 

  ご隠居 ご隠居が スポンサーになると言うのはどうだべ

  もしかして 三途の川のこちら側発見となるとよ

  やりようによっては エへへへーっと よだれが出ちまうだよ 

  えらい儲かるのとちゃいまっか」

隠:「八さん あなた 大阪弁はさておいて なんて言いながら

  お金儲けの話になると 途端に 大阪弁でっか」

八:「そーでんねん 金儲けと食べ物の話になると

  人格が一変して とたんに 大阪人になりまんねん

  もーかりまっか なんてね」

与:「ご隠居 スポンサー どないでっか

  悪い話では おまへんでー ほんま」

隠:「そーでんな 一口のりまひょか

  そんな分けないでしょー いい加減に 大阪弁は止めにしましょう 舌かみますわ」

熊:「そーしたら どうするか 別の対策をかんげーなくてはなんねーな

  このチャンスを 逃すてはねーだよ」

隠:「マーマー みなさん 冷静に ちょっと 落ち着きましょう

  あのですね 折角のりのりのとろに 水さすようで なんですが

  <あの世>と言うのは 誰かが言い出した 空想産物ですから

  それを いくら信じたところで

  貴方達の話しているレベルのようには 存在しないのですよ

  ここの ところを きちんと 弁えておく必要がありますよ」

熊:「あぶねー あぶねー 

  与太郎の話に載せられて 危うく 明後日の方へ行くとこだった

  与太郎のヒラメキには 気をつけなければ とんでもねーことになるぞ」

与:「そんじゃー <あの世>の入口の手掛かりが 振り出しに戻っちまったではねーか

  ご隠居 どーしてくれるだ」

隠:「どーしてって どうせ 空想産物ですから どーとでもなるではないですか」

与:「そもそも オラが <あの世>に関心を持つようになったのは

  とある 国立大学の学長さんと 電車で隣り合わせてよ

  学長さんは 若い時 肺結核を煩って 片方の肺を摘出することになったのだとよ

  その大手術の時 正に生死の間をさまようような状態となって

  その時に 教授はとてもとても 奇麗な花々の満開の野原の中を進んで行ったら

  一人の女性が見えたんだと  近づくと 

  それは 熊のカカーではなく」

熊:「なんで オイラのカカーが ここで 出てこなきゃー ならねーんだ

  まだ 元気で ぴんぴんしてるぞー 元気すぎるちゅーもんよ

  手にあましているだー」

与:「だから 熊のカカーでは無いと言ってるでねーか

  教授のお袋さんだったんだって

  それで <まだ来てはだめだよ 引き返しなさい>と言われたんだって

  それで 教授は 引き返して来たんだって

  それで 手術の方は成功して 一命をとりとめたんだって

  人が死ぬ時は 花畑を行くと 縁者が迎えに来ていると聞いたことがあるが

  あれは ひょっとしたら 本当かもしれませんよ

  こんな話 ひとに話したら 頭疑われかねないので 言わないのだけれど

  オラには 特別だ と言って 話してくれただよ

  これが <あの世>の入口の疑問の切っ掛けだーよ

  学長さんの話には 三途の川は 出てこなかっただよ

  奇麗な花満開の野原は 三途の川の向こうなのですかね

  奇麗な花満開の野原の向こうが どうも<あの世>らしいのだけんど

  このあたりが どうなってるのだべな ご隠居

隠:「さー 難しい話ですね 別々の<あの世>を想定すれば  

  事は 簡単ですけどねー」

八:「ご隠居 三途の川の場合 彼岸には やっぱり 縁者が迎えにきてるんですかねー

  その場合 <まだ来てはだめだよ 引き返しなさい>と言う事情で

  対岸に上がろうとしたところを 物干竿で 押し戻されて

  深みに はまって 死んでしまった場合は どうなるのだべ

  また 次の三途の川へ行くのだべか

  そしたら 三途の川でなくて 四途の川となるんだべか」

隠:「八さんの場合は きっと大丈夫ですよ 長生きしますよ」

与:「オラも 大丈夫だか ご隠居

隠:「3人組樣は 大 大 大 大丈夫ですよ きっと」

熊:「万が一 万が一だよ オイラが先に逝った場合は

  三途の川の こっち側で 待っててやるからな

逝く時は 三人ずれだ 

  ご隠居 だから 三途の川とう言うのかねー

  ご隠居も 一緒だと 四途の川 

  オバーさんも一緒だと 五途(ごんず)の川か

  ちょっと 響きが 良くねーな」

隠:「<あの世>でも 3人組樣と ご一緒と言うことですか

 そうしたら <この世>も<あの世>も変わりませんね」

与:「熊 下らねーこと 言ってんじゃー ねーよ

  ご隠居 へこんじまったでねーか

  でーじょうぶですだ ご隠居

  専属ボランティアのオラが ついて行きやすから」

隠:「それが一番の問題だったりしましてね」

与:「ご隠居 なんかおっしゃいましたか」

隠:「いやいや 蚊が飛んでいたのではないですか」

与:「ところで <あの世>だけんど

  三途の川経由でも 花満開の野原経由でも 阿弥陀様の来迎雲経由でも

  帰って来たヨッパライの雲の階段経由でも 行き先は 同じなんだべか

  それとも 別々なんだべか」

隠:「与太郎さんだったら どうでしょう 同じな方が良いですか

  それとも それぞれ異なっていた方がいいですか」

与:「オラの場合でやんすか オラの場合は 人それぞれの好みがあるから

  別の方がいいなー

  三途の川コースは 途中で溺れると困るしなー

  花満開の野原コースは 途中で蜂に指されるといてーしな

  阿弥陀様来迎雲コースは <あの世>で仏教の修行の毎日と聞くしなー

  帰って来たヨッパライの雲の階段コースは 一番たよんねーしな

  大体 晴れた日に 死んだひにゃー 雲の階段がねーんだぞ

  成仏できず 廃屋での暮らしは 厳しーぞ

  だから オラはオラの特別メニューで逝きてーな

  そうだ ドラえもん友達になって 

  どこでもドアーで 連れて行ってもらうことにするべ」

隠:「それでは きっと 別々ですよ

  多分 与太郎さんは 特注の

  《何じゃもんじゃ寿限無の<あの世>》ですよ」

与:「ご隠居も 思い切ったこと 言いやすだな

  発想がオラに似て来たでねーか」

隠:「そうなんですよ 近頃は

  なんと言っても 3人組のウイルスは 強烈ですからねー」

与:「ご隠居 八のウイルスにやられたんじゃーねーべな

  朝目覚めたら ソーッと 湿度の観察をするだか」

隠:「いやいや まだ今のところは 大丈夫ですよ」

与:「まだ今のところは ですかい

  しんぺーご無用 専属ボランティアのオラが付いてるだから」

隠:「急に 寒い話に陥りましたよ」

与:「湿度観察から 急に 水分が多くなって

  めっぽう 湿りっけの多い空気になりやしただ 

  それでは ぱーっと 取り直すべ

  八 おめー 十八番の タコ踊り

  熊 おめーは 登別の熊牧場の 熊やれや

  餌頂戴 頂戴のポーズ 並外れたのを頼むよ」

八:「おーう 任せなさい オラのタコ踊りは 本物だよ

  しかしだよ それを見る 根性があるだべな

  それなりの覚悟が必要だよ」

熊:「おーよ オイラもやってやろーじゃーねーか

  ただし 半端ジャーねーだよ

  オイラがやるからには それなりの覚悟をしてもらわねーとな」

隠:「お二人とも 覚悟を要求するのですか 穏やかではありませんね」

与:「なーに どおってこは無いだよ

  二人とも プロ気分でいるだけですだ」

隠:「プロとおっしゃいますと そのなんですか 

  早い話が 料金と言う話になるのですか」

与:「早い話も 遅い話も プロ相手ツー事になると

  結局は そうなりますかね

  なーに でーじょーぶですだ 

  プロデュースの達人のオラが うまくまとめてきやすから」

 

与:「ご隠居 まとめてきゃした 演技料でやすが

  八のタコ踊りは カリントー 3本

  熊の頂戴頂戴は ピーナッツ 5ヶ

  オラのプロデュース料は ポテトチップ 2枚

  ご隠居 これで手をうって もらえねーだか」

隠:「ちょと ちょと 何ですか それは」

与:「なんなら もー少し ねぎってきやすか

  オラ プロデュースの達人ですだよ」

隠:「驚きましたね 与太郎さん 本物のプロですね

  私は 梅屋の何じゃもんじゃ寿限無丼 3杯は覚悟していたのですよ」

与:「冗談ですよ あんな演技が金になるわけねーですだ

  金はらっても 見てくれる人なんか いやーしませんよ

  それより <あの世>の続きですだ

  要は <あの世>は決まった固定的なものでなくても良く

  それぞれの 好みで良いと言うことですだか」

隠:「それで 良いのではないでしょうか

  昔から あれこれ言われていますが 

  本来 根拠が確かな話ではないのでしょうから

  従来の御説に あまりとらわれず

  ご自分の納得できるものが 良いのではないですか

  従来の御説便乗が大好きな方は それはそれで結講でしょうが

  コツは あまり固定的に規制しない方が 良いのではなでしょうか

  ひとそれぞれの好みによることでしょうが 

  規制はほとんど無い方が 後々 潰しがきいて 良いようですよ

  今 これが良いと思っていても 

  後で 事情が変わると 窮屈になったりしますからね

  何時でも 変更自由自在の方が 良いように思いますがね

  もっとも 規制大好きの方は 目一杯規制するのも自由ですが

  こんなところで どうでしょうね」

熊:「ところで ご隠居 ひとそれぞれの好みで良い と言うだが

  普段の日常で見られる 多くの人の好みの基準は どんなんですだか」 

隠:「これはまた 難解な質問ですねー

  沢山の人々ですから 沢山の好みがあるのでしょうが

  現在の日本の日常で テレビなどのマスメディアに現れるのは

  <可愛い>と言うやつでは ないでしょうか 

  厳しい仕事の局面ではともかくとして

  普段の日常生活では とにかく<可愛い>と言う 判断基準が 

  最もはばを効かせているいるように 見えるのですね

  ご婦人が 衣服を選ぶ時など まずは<可愛い>かどうかが問題になる  

  のではないのでしょうか お子さんの衣服に限らず

  <可愛い>のが 良いらしいですよ

  食べ物選びの時も まずは見た目が<可愛い>か否かが選択の第一の 

  基準になっているようですよ

  そうは 思いませんか」

八:「思う 思う 思うなんてものではねだーよ 

  言われてみれば そのとーり

  ご隠居 熊のカカー イチゴ柄のパンツ持ってるだよ

  あれは カワイイー と言う判断で選んだに違いねーだよ」

隠:「八さん 貴方何でそんなこと 知ってるんです

  まさか 出歯・・・したんでは なでしょうね」

八:「違いますだよ ご隠居 オラ そんな趣味はねーだよ

  熊がね それを 借りてはいてただよ 

  それがひょんな拍子で見えちまっただよ 

  イチゴが 伸びに伸びて こんなでけー 赤いパプリカになってただよ」

隠:「イチゴ柄 良いではないですか 好きずきですから

  イチゴ柄でもパンダ柄でも 大きなお世話ですよ

  奥さんの好みなんですから」

八:「熊 パンダ柄も持ってるのか」

熊:「持ってたが悪いか なんか文句あっか 余計なお世話でー

  オイラが借りたのは 雨続きで 洗濯物が乾かず 

  オラの乾いたのが なかったので やむを得ずだー

  バーロー ションベンたれには 貸さねーぞ」

隠:「まーまー そー興奮なさらずらに

  イチゴパンダに 恨みがある訳ではないのですから」

与:「はーぁ ご隠居 それはちょっと 明後日ではねーだか」

隠:「与太郎さん このような局面を打開するには

  明後日が 一番なのです

  スイカ柄のも 可愛いですよ」

与:「ご隠居 ここで スイカ柄を出すだか

  今日に 戻ってしまうだよ

  熊 スイカ柄も持ってるのか」

熊:「あたこーよ イチゴ パンダ スイカ

  この業界の 金 銀 銅でー

  ドーダ 参ったか べらぼーめ」

与:「ご隠居 ヤブヘビだったなー」

隠:「八さん なんとかなりませんかねー」

八:「オラも スネにキズを持ってるだよ

  余計なこと言うと それこそ ヤブから大蛇になってしまうだよ」

熊:「こぉーら おめーら 何をコソコソやってんだー

  文句あんなら 大声で言えちゅーの」

隠:「弱りましたね

  ここを納めるには 奥の手を出すより有りませんね

  熊さん 貴方のお茶請けの好物は 何でしたかね」

熊:「それは 色々あらーね

  ご隠居 知りてーのですけー」

隠:「はいはい 今後のために 是非 お伺いしたいのですが」

熊:「んだば 教えてやるべー

  ご隠居も 言っちゃー なんだが もう歳と言えば歳だから

  物忘れをする事もあろーかと 思うので

  ここに 一週間分をメモって あるだ

  目録をどーぞ」

隠:「エエー 一週間分の目録

  ちょっと ちょっと なんか 様子がおかしくありませんか」

与:「やったぜー 大成功 

  イチゴ パンダ スイカちゃん バンザーイ

  これで 一週間分のお茶請け ゲットー

  ご隠居 オラ達 3人組の阿吽の呼吸ちゅーもんを 忘れただか」

隠:「ハー またですかー

  まんまと してやられましたねー

  もう 勘弁してくださいよ

  恐るべき 3人組ですねー

  それにしても 熊さんの奥さんまで ダシにつかって

  奥さんに 言いつけますからね」

熊:「残念でした 了承済み

  実は カカーも 一枚噛んでますんで

  菓子代 助かると 大喜びなんで

  何時でも イチゴを使って良いと 言ってますだー」

隠:「本当に 3人組には かないませんね

  こちらも おばあさんと 作戦を練らなければ」

与:「ご隠居も おばあさんに イチゴ柄ですけー」

隠:「バカ言わないで下さいよ 本当に 怒りますよ」

  そーだ 忘れていた 

  明日から 暫く出かけますから 当分 ティータイムはありませんよ」

与:「お出かけ 大歓迎 オラが 留守番いたしやすから

  何ら心配は不要 留守番の達人に 万事 お任せ下せー

  お土産の心配は いらねーだから」

隠:「エーッ お土産の心配まで

  そーだ 歳をとると 忘れぽくって いけませんねー

  思い出しました

  明日からの お出かけは 止めにしたのでした」

婆:「おじいさん 私は出掛けますからね

  そーそー お茶は バーゲンで買った

  2リッター 98円のを用意してありますから

  お茶請けは

  八さんは カリントー 3本

  熊さんは ピーナッツ 5ヶ

  与太郎さんは ポテトチップ 2枚 でしたね

  ちゃんと 用意してありますから ご心配なく」

与:「何時見てもお若くて きれーですね 奥様は」

婆:「与太郎さん もう手遅れですよ その手には 乗りませんから」

熊:「これは 強敵が現れましたぜ

  オイラ達も 対策を煉り直さなくてはならねーな」

隠:「長年連れ添った仲ですよ 阿吽の呼吸というのですかね

  年期の違いと言うものですよ」

婆:「おじいさん 調子に乗らないで下さいよ」

隠:「アッ まだ居たの」

婆:「簡単に 載せられないように しっかりして下さいよ

  それでは 私は 出掛けますから

  おじいさん どうかしら

  武井 咲ちゃんの お姉さんに 見間違えられないかしら

  オホホホホ

  後を 宜しくお願いしますよ」

隠:「オホホホホ なんて もー 出掛けるのですか

  いってらっしゃい

  と言うことは 当分 自分のことは 

  自分でしなくてはならないと言うことだな」

与:「ご隠居 ご心配なく

  専属ボランティアのオラが付いてますだ 何の不便もお掛けしません

  駅前の和菓子屋までなんぞ 5分もあれば 十分ですだ」

隠:「その手には やすやすと 引っ掛かりませんよ

  お腹が減ったら 梅家さんへは行きませんよ

  いざとなれば 竹家さんの 天丼がありますから 大丈夫ですよ」

熊:「ご隠居も すっかりガードが固くなってしまったなー

  対策会議開くぞー 行くぞー」

隠:「どーぞ 存分に煉って下さいませ 会場は梅家さんですか

  何じゃもんじゃ 寿限無 寿限無 やって下さいませ」

 

どうもお疲れ樣で ございました

お後が宜しいようで