《停念堂閑記》4

「停念堂寄席」4

 

《お笑い日本昔話考》2 (2013-01-04)

 

 日本昔話をネタにしたお笑いをもう一つ紹介します。落語になっているので、知っている方も大勢おられると思います。

 お爺さんが柴を刈りに行った山からの帰り道、ワナにかかって苦しんでいる鶴を見つけ、ワナからはずして、逃がしてあげました。

 家に戻ったお爺さんは、お婆さんに鶴を逃がしてやったことを話しました。おばあさん

も喜びました。

 そこへ、トトトンと、戸を叩く音がしました。こんな夜更けに何だろうと、おじいさんが戸を開けると、そこには真っ白な着物を着たかわいい娘さんが立っていました。

 夜分すみませんが、大雪に降られて困ってます。どうか一晩泊めていただけませんか、という。

 それはお困りじゃろうからと、お爺さんは娘を家に上げ、温かいお粥を出してあげました。話を聞いてみると、娘は身寄りが一切なく一人ぼっち だということでした。それでは、あんたさえ良ければしばらく家におってくれてもいいよ、ということになり、こうして娘はお爺さんお婆さんと暮らすことにな りました。娘は家においてくれるお礼にと、まめまめしく働きました。そうです。娘は、お爺さんが助けたあのツルの化身だったのです。

 ある時、娘は布を織りたいので糸を買ってきて下さいとおじいさんに頼みました。自分は織物が得意だから、少しでも家計の手助けがしたいというのです。

 おじいさんが糸を買ってくると、娘は隣の部屋にとじこもり、「織りあがるまでけして覗かないでください」と言って織り始めました。

 そのうち、機織りの音が止んでしまったので、お爺さんは、どうしたのだろうと、そおっと、戸を開けて見たところ、娘さんの姿が見当たりませんでした。それどころか、タンスに入れてあった大事な物が全部なくなっているではありませんか。娘が持ち逃げしたのです。

 そうです。実は、娘は鶴ではなく、サギだったのです。

                         [“お笑い”「鶴の恩返し」]

【余談】

 落語にも使われている有名な噺です。実は、この噺には、裏話があるのだそうです。

 後日、娘はだまし取った品を質屋さんに持ち込んだところ、みんな偽物だといわれました。おまけに足がついて、娘は逮捕されてしまいました。取り調べの時、娘は、騙された、とたいそう悔しがったということです。

 そうです、年の功と言いますか、お爺さんの方が一枚上手だったのです。実は、お爺さんは、大サギの化身だったのです。