《停念堂閑記》6

「停念堂寄席」6

 

 《お笑い日本昔話考》4 (2013-01-06)

 

 自作のお笑い日本昔話をもう一つ紹介します。浦島太郎をネタにしたものです。

 竜宮城にすっかり長居してしまった太郎さんは、乙姫さんからお土産の玉手箱を貰って、竜宮城を後にしました。浜辺に戻って来た太郎さんは、 絶対開けてはいけませんよ、と言う乙姫さんの念押しに反して、玉手箱を開けてしまいました。そしたら白い煙がパット出て、たちまち太郎さんは白髪頭のお爺 さんになってしまいましたとさ。

 この事態に、太郎さんは頭に来てしまいました。乙姫のやつ、何という事を。ひとこと文句を言わずにおられようか、と助けた亀に再び飛び乗るや、竜宮城目指してまっしぐら。

 この事態を察知した乙姫さんは、大急ぎで竜宮城の門を閉めるように命じましたとさ。そこにやって来た太郎さん、門と言う門が閉められています。しかし、長居していたことがあるので勝手知ったる竜宮城、裏口から入ってやれ、と裏に回ろうとしたのだとさ。

 この事態に、大慌てで、乙姫さんは念をおしたとさ。

 “うらしめたろうね”と。

                    [「“お笑い”うらしめたろう」の一節]

【余談】

 以前、勤め先に新たに転任してきたお方がありました。ある日の昼飯後、茶話室でだべっておりましたら、「浦島太郎は宇宙人だったのか」と、 突然質問されました。「どうして」と聞いたら、「太郎は、海中で溺れなかった」と言うのです。この時、初めて知った。「宇宙人は、水中でも、溺れない」の だと。知らなかったなぁ。宇宙人は溺れないのか・・・。

 何ぶん突然ではありましたが、“浦島伝説を調べる”はめと相なったのであります。あまりにも有名な噺なので、これに関わる文章がすこぶる多く存在していることが判明した。いろいろな御説が横行しているが、古くは『古事記』・『日本書紀』・『風土記』や『万葉集』に見られる噺のようである。とりあえず、手元にあった『風土記』(「丹後国風土記逸文)にあたってみた。詳細な内容は、忘れてしまったが、ある日、浦島さんは小舟で海に釣りに出たようです。一向に何も釣れずに数日が経過した日、釣れたのです。何かと言うと、なんと七色に輝く甲羅を持つ亀さんだったのです。ど派手な亀もいたものです。さしずめ七宝焼の甲羅をまとったイケイケの亀さんと言うところでしょうか。したがって、ここにはいじめっ子は登場して来ません。よって、七宝焼の亀さんは浦島さんにいじめっ子から助けてもらった恩を感ずる必要はなく、御礼に竜宮城にご案内する必要も無かったようです。

 結論的には、浦島さんは助けた亀の背に乗って、海中の竜宮城へは行っていないことが判明したのです。したがって、浦島さんは溺れる心配は無かったのであります。よって、浦島さんを宇宙人と断定するわけにはいかない、という結論に達したのでありました。